雪&氷海外登山2017年

ヨーロッパアルプス モンブラン山群 Point Lachenal Traverse 2017.4.4

ヨーロッパアルプス モンブラン山群 Point Lachenal Traverse ポイントラショナルトラバース

2017年4月4

メンバー:太田・ジルさん(ガイド)

8:00ケーブルカー―9:30スノーシューデポ―9:45取りつき―11:35 頂上―12:00下山開始―12:30スノーシューデポ地点―13:30コスミック小屋

 

7:40ケーブルカー乗り場へ。8:00の運行開始だが、すでにチケット売り場には各国からのスキーヤーが列をなしている。ガイドをお願いしたジルさんも既に来ていた。すし詰めのケーブルカーで山頂駅へ。

ケーブルカーはスキーヤーで満杯
ケーブルカーはスキーヤーで満杯

一昨日はガスガスで眺望がなかったが、今日は青空。ジルさんに山の名前を教えてもらう。「ツェルマットがあそこで・・・」といわれ、目を向けると、マッターホルンのトンガリがはるか遠くに見えた。

遠くにはマッターホルン
遠くにはマッターホルン

登山道へと続く雪のトンネルで、ハーネス、アイゼンを装着する。ジルさんが素早くビーコンをつけてくれる。ロープ末端を渡されたので、エイトノットを作ろうと思ったら、もうできている。ハーネスに通そうとしたら、やってくれる。ガイド登山とはこういうものか。今日はジルさんの流れに任せることにする。

ベテランガイドのジルさん
ベテランガイドのジルさん

坂口・田中のシェリー クーロワール組は素早く準備を整え、どんどん降りてゆく。私はジルさんに確保されていて、かつ両側にフィックスロープが張ってあるものの、ケーブルカー駅直下の急坂が怖く、しぶしぶ降りる。

ケーブルカー直下の急坂
ケーブルカー直下の急坂

急坂を降り切ると、Col du Midiの雪原。左手にはグランドジョラス。

グランドジョラス
グランドジョラス

右側に進路をとるシェリー組を横目に、ポイントラショナル取りつきに向かう。9:30途中、スノーシューをデポ。一昨日はところどころ腰まで埋まる深雪だったのに、今日はアイゼンで普通に歩ける。

右に小さく見えるのは坂口・田中パーティー
右に小さく見えるのは坂口・田中パーティー

9:45 取りつき。ロープを出して、ジルさんリードで固い雪面をダブルアックスで登る。基本、顧客が見える範囲でガイドさんは行動するらしく、短めに切っている。

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次は赤茶けた岩をトラバースする。ジルさんがムーブを説明しながらロープを伸ばしてくれる。そう難しくないが、海外でケガをしたら大事になる。落ち着いて、ゆっくり慎重に進む。

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ヨーロッパの岩場にはあまり残置支点がないと聞いていたが、ここは要所要所に残置がある。ハーケンがあったり、カムを改造した残置があったり。カムを使って支点を作ったのは最初だけだった。

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岩稜を抜けると、再び雪面。日陰で固い。日本にいるつもりのスピードで登るとすぐに息が切れ、足がつりそうになる。登りきると、そこが第三峰の頂上だった。

三峰頂上
三峰頂上

陽が当たるところに座り、行動食を食べ始めると、すぐに黒い鳥が飛来。餌をあげたら怒られるかな?と考えていたら、ジルさんがクッキーの屑をあげはじめた。カラスのような鳥だが、さえずり声が綺麗。

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のんびりしながら、ジルさんの経歴について聞いてみる。シャモニーの出身で、フランス国立登山学校を出た後、35年間ガイドをしているそうだ。日本にも来たことがあり、富士山に登ったり、スキーをしたりしたらしい。

12:00カチカチに凍った氷の斜面を下山開始。アックスを振ってみるが、簡単に跳ね返される。不安そうに顔を上げると、ジルさんがピッケルで支点を作り、ビレーしてくれたので、安心して降りる。その後、ジルさんは「このアイス、固いねぇ」と言いながら、ピッケルでステップを一つ一つ切りながら時間をかけて降りてきた。

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目前に迫ったセラックを眺めつつ、下山を続ける。

セラックが目前に
セラックが目前に

12:30あっという間にスノーシューをデポ地点までやってきた。その後は広大な雪原を小屋に向けて歩く。午後から曇り・雪の予報的中か、だんだん雲が出てきている。ポイントラショナルトラバースは、本来は第1峰~3峰まで、3つのピークを超えるルート。三峰しかやらなかったのは、私の力量をみてか、予報が悪かった午後の天候を考慮してか。13:30小屋前でジルさんに別れを告げる。

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小屋に入り、比較的軽そうな「スープ 8ユーロ」を頼んでみる。ドでかいボールにスープ、とチーズ、は予想どおり。そこにパンがついてきた。夕食食べられるかな・・・。

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そうこうしているうちに、ガスが出てきて視界が完全に閉ざされる。坂口さん、田中さんは悪条件での登攀は慣れているだろうが、帰り、だだっ広い雪原で迷わないか心配だ。

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とりあえず、二人が無事帰ってくることを信じて、昨日シャモニーのHigh mountain officeで情報を得た、Modica-Nouryのトポを手書き翻訳して過ごす。坂口さんと田中さんが目的としていたスーパークーロワールは今年は氷がなく、今シーズン登頂した人はいないとのこと。モンブラン登頂は、話す人話す人、雪崩リスクを挙げて難色を示す。登攀可能なのはModica-Nouryで、今年はスーパークーロワール級に難易度が上がっているらしい。二人が何を選ぶかは分からないが、選択肢はたくさんあったほうが良いだろう。

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小屋は一昨日(私たちのほかにもう1パーティーしかいなかった)よりにぎわっており、私はオーストラリア人パーティーと意気投合、トポの英文の解釈を教えてもらったり、コシウスコ山やブルーマウンテンの話で盛り上がり、楽しい時間を過ごしつつも、やはり窓の外が気になる。ガスは一向に晴れず、ときおり雪も舞い始めた。19:00食事時になっても二人は戻ってこず、電話も通じない。オーストラリア人たちも心配して「探しに行ってあげようか?」と言ってくれる。何度も外に出るが、何も聞こえないし、人影も見えない。視界5mというところか。気温は高いが、大丈夫か。何度目かに外にでていたら、小屋のお姉さんが、「携帯なってたよ」と、食堂にうっかり忘れていた私のガラケーを持ってきてくれた。坂口さんからだった。電話で話して1分もしないうちに、霧の中からコンパスをぶら下げた二人が現れた。ほっ。。。それにしても、モンブランで出会う人出会う人、国籍を問わず皆、思いやりがあり親切だ。

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明日の天気は午前は微妙、とのこと。とりあえず5時起きにして、就寝。3時ころ、外に出てみると、月と星が綺麗だった。本当に明日の朝、崩れるのか?