カナダ Squamish 【後編】 メンバー:L田中、斎藤、太田(記録)、他1名
8月14日(火) Squamish バットレス取付き確認、ギア整理
明日登攀を予定しているマルチルートThe CHIEFのButt Lightの取り付きを確認に行くことに。
下からBanana Peal等のルートを登って繋げる方法もあるが、スラブで殆どボルトが無いと聞いたため、下部は巻いて歩きで行くことにした。駐車場からマウンテンバイク道を数分歩き、森に入る。
ふもとはボルダーエリアで踏み跡が多数あり、多少迷ったが、すぐに登山道を発見。意外と急登だ。
Grandの看板が出てきたら左折。スラブに出る。Apronの数々のルートの終了点になっており、登攀を終えた人たちから情報収集。ここからBoomistic Crack 5.7の取り付きまで、念のためロープを出して歩いたほうが良さそうだということになり、偵察完了。
ホステルに帰り、駐車場で明日に備えてギアの整理。
午後は自由時間とし、それぞれ町に繰り出した。周辺の岩山がきれいに見えたのは初日だけで、景色がかすんでいる。理由を地元の人に聞いたところ、毎年自然発生する山火事の影響とのこと。数日前に雨が降ったため、濡れた木が燃えるので煙が酷くなったらしい。今年はまだマシなほう、だそうな。
アウトドアのメッカだけあり、街のカフェではそこかしこでクライマーやマウンテンバイカーがガイドブックを広げて打合せをしていた。
8月15(水) The CHIEF(Butt light)、Murrin Park
ルート概要:Apronを巻くため、登山道にてBoomistic Crack 5.7取り付き直下まで歩き-Boomistic Crack 5.7-歩き-Squamish buttressーButt Light取り付き-1P目5.10a フェース-2P目5.9チムニー-3P目簡単なスラブ歩き-登山道にてChief頂上へ
タイム:5:10 駐車場発―5:40 登攀準備地点-6:10登攀開始、6:20 Boomistic crack 5.7 取付きー6:40 田中登攀開始、木で切る-2P目太田 7:15完了-休憩後、靴を履き変え歩き、7:50 Squamish buttress取付き。【Squamish Buttress】7:55 1P目 斉藤、その後太田-8:35 太田 1ピッチ目木で切り完了、田中次の木まで伸ばし、9:00 2人とも2ピッチ目終了。9:05 太田 3ピッチ目リード、9:25 田中 4ピッチ目リードし、9:45 Butt light 取付き。【Butt Light】10:10田中スタート、10:30太田フォロースタート、10:50完了-11:10田中 2ピッチ目 5.9チムニースタート、チムニー直上の木できり、太田10:30フォロー完了。3P目田中 直登後、コンテで緩やかなスラブ歩き―12:30山頂―12:50一般登山道下山開始―13:50キャンプ場―14:30駐車場
Squamishでひときわ目立つ岩山、CHIEFの頂上に出られるマルチピッチ、The Butt Light5.10aに挑戦。
4:00起床、4:30に宿を出て、A&Wのドライブスルーで朝飯を調達。5:00頃駐車場に着き、トイレを済ませて5:10出発。30分ほど急登を行き、昨日偵察したBoomistic Crackの取り付き直下に到着。テーピングなど、のんびり準備をしているうちに、夜が明けてきた。
6:10、斎藤・N氏、田中・太田のパーティー分けで、念のためにロープを出して、簡単なスラブを登り、Boomistic Crack 5.7の取りつきへ。Boomistic Crackは、今にもはがれ落ちそうな音がするフレークの上を歩いた後、簡単なクラックを左上。
途中の木で切り、リード交代、更にクラック沿いにロープを伸ばす。森に入る手前の木で切り、ロープをまとめ、靴を履き変えて踏み跡をたどる。やや迷いつつ、30分程度でSquamish Buttress取り付きに到着。
7:55 斉藤、太田のリードでSquamish Buttress1ピッチ目スタート。途中の木で切り、フォローの田中さんに次の木まで伸ばしてもらう。
9:05、3ピッチ目。4級程度の岩場を太田リード、その後、似たような岩を田中リードで5ピッチ目終了、9:45 Butt Light取りつきに出る。
N氏は既に核心の5.10aにとりついており、「フェースだった!意外と簡単!」との感想。
10:10、田中さんがリードし、10:30太田フォロースタート。思ったよりもホールドは豊富だが、高度感に負け、1度ヌンチャクを掴んでしまった。
11:10 田中さんのリードで2ピッチ目のチムニー5.9。ビレーしていると、右はTCプロ、左はミウラーを履いた白人のお姉さんに追いつかれる。だいぶ慣れている風なので、何度も来ているのか聞いたところ、ガイドさんだった。そして、連れていたのはホステルで同室のオタワから来た男の子だった。奇遇だ。
そんな会話の最中、田中さんは壁側に顔を向けた姿勢で、チムニー内で超絶バランシーな動きを繰り広げている。ニーバーで耐え、片手だけが外に出て、何もない岩肌をまさぐっている。おまけに5番のカムはだいぶ下。明らかに苦戦している。
ガイドさんに「私、チムニー抜けられないかも」と弱音を吐くと、「チムニーは思うほど難しくないから大丈夫だよ。それよりも、出だしで1段上がるときに振られるのが怖いっていう人の方が多いから、振られ止めのカム決めといてあげるよー。」と、ビレー点から1段上がったところにカムを打ってくれた。え、核心そこ!?
そうこうしているうちに田中さんは力業で抜け、「顔は壁側に向けて登るんだよー!」と言い残して、直上の木でビレー。さて、いざフォロー。出だしは問題なかったが、予想どおりチムニーで苦戦。壁はツルツル、ホールドははるか上。まじか。と、ガイドさんが「向きが反対ー!お尻を壁側にくっつけて!足をカンテのへこみに乗せてプーッシュ!」と遠隔ガイドしてくれた。なんだ、階段じゃないか。階段に足を上げ、2、3回プッシュしたら抜けられた。実際は田中さんのリード開始から私のフォロー終了まで、たったの20分だったのだが、田中さんは1時間かかったと思った、との感想だった。(斎藤さんに聞くと、最初は田中さんと同じ向きで取りついたが、それではグレード感が合わないと感じ、向きを反対にして突破したとのことだった。)
その後、田中さんは目の前のクラックを使い、最終ピッチを直上していったが、よく見ると車いすスロープのような岩になっており、ガイドパーティーはロープは出しているものの、ジグザグに2足歩行。10cのルートから来た別のパーティーは、ロープを片付けて歩いて行った。なぜ田中先生は敢えて厳しい道を行くんだろう…。(後で聞くと、疲れていて目の前のクラックしか目にはいらなかったそうな。)1段目、何とか力を振り絞って登る。2段目、疲れてマントルが返せず苦しむ。そんな私を後目に、他のパーティーたちは私のロープをまたいで歩いて行く。完全に心が折れた。ロープを緩めてもらって、私もスロープ歩いて田中さんのもとへ。
コンテでゆるやかなスラブを登山道を探してウロウロ歩いていると、CHIEF頂上からN氏の声が。登山道の位置を教えてくれる。
靴を履き替え、ロープをたたんでCHIEF頂上へ。海がきれいに見える。一般登山道から来た人や犬もたくさんおり、のどかな雰囲気だ。登山者のおやつを狙って、シマリスがちょろちょろしている。つるべで登った斎藤・N氏パーティーは1時間くらい前に着いていたらしい。お待たせしました。
しばらく頂上で休憩した後、一般登山道で下山。石や木で階段が作ってあり、あまりに整備が行き届いていて驚いた。
ふもとのキャンプ場からは、マウンテンバイク道を歩いて、もと来た駐車場へ。
街で軽く食事をし、Murrin Parkへ移動。難易度が高いルートが多いPetrifying wall に向かう。駐車場から10分程度で到着、甲府幕岩的に横に広く、高さがある。70mロープを使っている人が多いのも頷ける。
Heavy petting action 5.10b N氏 MOS、斎藤FL、Pleasant pheasant 5.11a 田中1テン。
20時くらいに撤収。6時くらいから20時まで明るいので、一日中クライミングが楽しめるのもこの季節の良いところ。
8月16日(木)The CHIEF Grand Wall、Murrin Park
昨日は丸一日、クライミングをしたので、今日は遅出。私は朝の散歩を楽しんだ。ホステルの前は入り江沿いや森の中を縫うサイクリング道路になっており、気持ちが良い。
11:30にホステルを出、せっかくなので、The CHIEFのGrand Wallにあるルートを登ってみようと、クラックのExasperator 1p目 5.10a を目指す。ふもとは岩がゴロゴロ。ボルダラーで賑わっている。
10分程度でExasperator 取りつきに到着。
Top100に選ばれているルートだけあり、順番待ちをし、田中さんが最初に取りつく。いつもよりだいぶゆっくりだが、順調に進む。が、あと5m程度のところでカムを連打したかと思ったら「テンション!」。カムが足りなくなってしまったようだ。惜しい。その後、いったん降りてカムを補給して抜ける。だいぶ怖かったとのこと。
私も試しにトップロープで触るが、初めてのシンハンドで、手はともかく足の決め方が全く分からなかった。田中さんの失敗から、斎藤さんはカムとナッツをふんだんにもってトライし、見事FL。余談だが、私たちの後にも順番待ちができており、フレンチカナディアンらしきカップルに話しかけてみたところ、東海岸のケベックからSquamishまで50時間、4日間かけて車できたそうな。カナダの広さを改めて実感。
その後、Murrin Parkに移動し(車で10分足らず)、The Milkman AreaでThe world’s toughest milkman 5.9NPを田中OS、斉藤 FL。
Zoë に移動し、看板ルートのZoëを触ろうと思ったが、順番待ちがあったので、田中さんがJeff and the Giant Reach 5.11c をお買い得と見込んでトライ。しかし核心突破できず、2テン。どうやらホールドが遠いらしい。斉藤さんも トップロープで触り、月が出る時間になったので撤収。
8月17日 (金) Cheakamus Canyon
クライミング最終日、スポーツルートのCheakamus(通称 Check)にもう一度行くことにした。
私は短いマルチをやりたかったので、Top100のStar Chek 取付きを確認に行くも、先行パーティーがすでに迷っており、取りつきが良くわからないのと、分かったとしても順番待ちになるのであきらめて、普通にスポーツルートをやることにした。(あとで取りつきの場所は分かったが、高速はなかなかUターンできないので難易度高し。)
まずはWell of soulsでアップ。We meet again, Fraulein 5.9 田中MOS、太田TRノーテン、斉藤FL。日本で5.9というとガバな気がするが、こちらはカチ以上ガバ未満のホールドで、思うほど甘くない。
Face the music 5.12a 田中トライ
Kigijiushi 5.10c 斉藤MOS、太田TR途中敗退、田中FL
The mutation 5.11c 斉藤トライ。
月曜日に来た時よりもだいぶ人は少ないが、義足のドイツ人クライマーや、外見はふくよかなお母さんという感じなのに、12cをスイスイとトップアウトするポーランド人、モカシムで12を登る底抜けに明るいメキシコ人集団、クライミングはそこそこに、将来の夢や恋愛話に忙しいカナダ人の二十歳の若者達など、世界各国から様々な人が来ていて面白い。アプローチも短く、老若男女、初心者から上級者まで気軽に楽しめるのがSquamishの良いところだ。
人だけでなく、犬もいろいろな種類が自由に遊び回っている。リスやネズミ(?)もちょろちょろ。
良い時間になってきたので、最後に駐車場の目の前にあるFoundation wallに移動し、Real TV 5.10a 田中MOS、斉藤FL
Flaming arete 5.7 太田MOSしてクライミング終了。
カナダ人の若者達が「湖が”Soooooooo Beautiful”だから明日はBrohm Lakeにハイキングに行くんだ」と言っていたので、帰りがけに立ち寄ってからホステルに戻る。
帰路、山火事の煙もだいぶ収まり、久々に周辺の山々が見えた。
最終日ということで、夜は豪華におしゃれレストランPepe’sでイタリア料理やステーキを楽しんだ。ホステルに戻り、洗濯をし(洗濯機3ドル、乾燥機3ドル)、相部屋で店を広げては迷惑なので駐車場でパッキングをしてから深夜に就寝。
8月18日(土)
ホステルで食事を済ませ、空港へ。なお、Squamish Adventure Innlは以下写真のようなこんな感じのところ。ホステルとしては綺麗なほうで、クライマーが多いせいか、夜騒いでいる人は皆無だったのが良かった。
1時間半程度で空港に到着。レンタカーを返し、Air Canada Rougeで名古屋に戻る。
LCCなのでアルコール有料、個人用モニターはなく、あらかじめスマホやipadにアプリをダウンロードすると機内Wifiで映画が見れるのだが、よく途切れる。まぁ、LCCだし、北米路線だし、こんなもんか。
出発日には気温40度近かった名古屋も、30度に落ち着いており、ほっとした。西海岸で飛行時間も10時間程度、VancouverからSquamishまで車で1.5時間、駐車場から岩場まで、近いところは20秒と、移動時間的にもSquamishは魅力的な場所だということが分かった。また行きたい。