冬山合宿 北岳バットレス第四尾根

日程:2022年12月31日(土)~翌年1月2日(月)

メンバー:L斉藤、丹羽ダ(記録)

タイム:(初日)奈良田6:10~あるき沢橋9:50~池山小屋13:20~2440mBC15:10

(2日目)BC3:30~ボーコン沢5:00~八本歯コル6:30~下部岩壁登攀開始7:50~第四尾根登攀開始10:50~終了点16:00~稜線16:50~BC20:00

(3日目)BC7:50~歩き沢橋10:10~奈良田13:40

(初日) 広島三原から名古屋を経由して9時間のドライブで深夜1時に奈良田へ到着。今は中部横断自動車道が開通し、長かった下道が相当短くなった。

5時に起床して準備をしていると見回りの警察から安全登山について注意喚起を受ける。お互い26キロの重量を背負い、あるき沢橋まで長い林道歩きを開始。天気は快晴。この時間帯の入山者が結構多く、合計で4人くらい居たが、驚いたのは全員単独行であることだった。

あるき沢橋からは池山小屋まで雪も少なく、トレースもバッチリ。雪の感触からクリスマス寒波以来は降っていないのだろう、上部の雪の状態も安定しているだろうということが窺えた。

それでも小屋に着くと池は完全に埋まっているほど雪があった。(2016年に白根三山を縦走した際には、ここで全く雪がなかった。)

計画書ではボーコン沢の頭までの行程だが、重荷に負けペースを上げることができず、丹羽はバテバテ。地図をみて相談した結果、標高2440m程度が幕営地に良いのではとあたりを付ける。アタックは八本歯コルを6時半目標に調整して出発しようということにし、最後の力を振り絞って2440mの目標地点に這い上がり幕営。

 

(2日目) 2時起床、3時半出発。既に池山小屋幕営組が外を歩いている。皆、初日の出を目的にしているのかもしれない。天気は快晴。この日は前日に比べ荷も軽く、快調に歩く。

ボーコン沢の頭手前から樹林帯を抜け、強い風が吹く。この辺りは、おそらく風が抜ける場所なのだろう。八本歯ではほとんど吹いていなかった。その八本歯も雪が付くとロープが必要になるレベルの難所となるが、トレースがバッチリで、夏道と大差ない状況だった。

八本歯コルからは、これまた大樺沢登山道にトレースがある。すれ違った登山者に聞いた情報によると前日バットレスに取りついたパーティが少なくとも2組はいたらしい。この日はどうやら貸切りのようだ。

登攀準備をし、その登山道を下降。140m程度下降した、標高2740m程度付近から左側の谷に下りれそうだったので、これまたトレースに助けられつつ、小尾根を2本程度またいで下部岩壁の基部を目指す。

基部は一面の雪面だったが、量は少なく、見上げる岩が黒々としている。ただ、想像通り雪は安定していた。

 

トレースは更にトラバースをして、どうもBガリー大滝に向かっているようだったが、我々はノートレースの第五支稜からアプローチすることにした。

Dガリー大滝も見た目は簡単そうに見える。後で検証した結果、BガリーもDガリーも雪が多いと楽かもしれないが、少ないと苦労を強いられるのではないか。

ということでさっそく第五支稜をDガリー大滝基部から丹羽リードで登攀開始。

夏は簡単なはずが、出だしから非常に悪く、特にトラバースはスタンスも不安定な雪と、ホールドはアンダーを繋いでの繊細なクライミング。リッジに乗ったら楽になるかと思いきや、支点が何もなくランナウトし、非常に悪く感じた。30mでピッチを切り、斉藤さんに、そのまま雪のリッジを伸ばしてもらい、雪田で一度ロープを畳む。

ここは一昨年夏に、JAC広島支部とビバークをした場所で懐かしい。もう一段上の横断バンドまで、単なる雪壁となったDガリーを詰める。容易。

復活したトレースを辿って横断バンドからCガリー右岸へ回り込んで、四尾根の取付に。途中、四尾根に上がる寸前でワンポイント悪い箇所があり、お助けロープを出した。

四尾根1P目(斉藤) 出だしのクラックは半分程度埋没。越えてから左に移る箇所がやや悪い。スラブを登り30m程度で切る。

このピッチで全てを悟った。夏は容易なスラブの上に、中途半端な雪が乗り悪くなっている箇所が多いということを。

2P目(丹羽)スラブの左端のカンテ部分を拾い右上。スラブのスタンスが拾いづらく、怖い。白いクラックを右に回り込んだ灌木でビレイ。ビレイ地点は日陰で寒い。

3P目(斉藤)クラックが2本走っていたので右のクラックから上がり、途中で左のクラックに移る。傾斜はないが、悪い。段々雲が増え始めてくる。天気は少しずつ下り坂。

4P目(丹羽)3mの垂壁までは容易だったが、核心と言われるここを越えるのに大変苦労した。クラックにダブルアックスがかかり、かなり良いが、とにかく足がない。足ブラになりながらも、何とか耐えて乗越そうとするが、何度トライしても超えることができなかった。右に回り込むと比較的容易になるので、振り子で右にトラバース。ただ上がってからも、悪い場所が続き、ハイ松に支点を取りながらマッチ箱のコルへ。マッチ箱の上も、悪かった。フォローも垂壁はスリングアブミを使用。

マッチ箱は通常通り懸垂下降。

5P目(斉藤)懸垂で下りた地点から、最初は右のマッチ箱よりにリッジを上がり、途中から左の凹状部分を枯れ木テラスまで。このピッチは雪の付きが多く、個人的には一番登りやすいと感じた。

6P目(丹羽)城塞ハングへのトラバースはリッジを馬乗りスタイルで通過。馬乗りで前進するムーブは初めてだ。

城塞ハングそのものは、夏は容易だが、足がなく、また4P目で疲労した上に、登れなかったことによるメンタル崩壊も手伝い、A0をしまくってしまう。冷静になれば、良い場所に左手のバイルホールドがあったが、完全に精彩さを欠いた動きとなってしまった。これにて登攀終了。

16時、何とか明るいうちに登攀を終えることができ、トレースを追いかけて主稜線へ。本当に最後までトレース様、ありがとうございました。

この日は、天候が夕方より、やや悪くなる予報になっていたことと、遅くなっていたので頂上は目指さずベースキャンプに戻ることにした。

吊尾根上部はほとんど雪がなく順調に下降していたが、八本歯からボーコン沢の頭までの間の稜線で、丹羽がバテバテとなる。最後は気力で歩き切り20時にBCに帰還した。

(3日目) 5時起き、7時半出発。下山するだけなので、ゆっくり。特筆することなし。

12キロの林道歩きは、1キロ毎に設置された看板の、残り距離の表示が少なくなっていくのを楽しみに歩くだけである。足にマメを作りつつ、奈良田へ下山した。

※感想:丹羽は2006年11月に名古屋山岳会に入会、2カ月後の冬山合宿:北岳~塩見岳の縦走隊に参加しました。この合宿に別働隊で先輩の吉村さん・有富さんと退会された方の3名で北岳バットレス第四尾根登攀隊の姿がありました。

いつかは、自分も力をつけ、同じルートを登れるようになりたい。ずっと、そう思わせてくれた憧れのルートでしたが、あれから16年、パートナーにも恵まれ、ようやく挑戦し登ることができました。トレーニングを通じて感謝です。

また全体を通じてトレースを利用できたおかげでビバークせずに抜けることができましたが、第五支稜には我々のトレースを残して登攀できたので素直に嬉しく思います。

四尾根は雪が少ない方が難しいと聞いておりました。だとしたら今回は難しい条件だったのか。雪がある条件を登っている訳ではないので、わかりませんが大きなルートの登攀を成功させることができて良かったし、頑張ったなと思います。

ただ、まだまだ足りていないと感じる部分もありました。これからの課題です

以上。