2016.8.12 3日目 滝谷第一尾根

メンバー:L有冨・丹羽ま・武田(記録) (先行:粂野・小川よ)

タイム:3:00起床→4:15涸沢テント場出発→6:45北穂→7:10B沢→10:00第一尾根取付→15:15Bフェース→17:30Aフェース→18:45リッジ→19:30北穂頂上→22:30涸沢テント場

 

合宿初日、西野OBから第一尾根のことを聞く。あまりよろしい情報ではない。2日目にドーム中央稜に行った帰りに、丹羽(ま)さんが「情報収集しよう」と北穂小屋へ。数年前には、「とてもよいルート」と紹介されていたらしい。

小屋でルートに詳しい方に「すっきりしていて、ダイナミックでおもしろい」とのお話しを伺う。

軽く朝食をとり、出発。クラック尾根隊、第一尾根隊、取りつきは同じ。まとまって歩く。自分が先頭なので、とにかくゆっくりの登りになった。18:00には天候が崩れる予報がでていたので、気持ちは焦る。

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北穂頂上で大休止。北穂小屋でハーネスをつける。

総勢8名で懸垂支点を使いながらB沢をくだる。目印のフィックスは割とすぐに見つかった。事前に聞いていたため、フィックスは使わず、自前のロープを出して登り、15mほど懸垂。踏み跡はあるもののわかりにくい。そのうえ、トラバースする懸垂ができず、一度棚まで降りた。ぐずぐずしたところをフリーで登る。

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白いペンキで♂マークがあるところで、クラック尾根隊と別れる。さらにトラバースして、第一尾根取りつきへ。大きさに圧倒される。見上げても見下ろしても幽玄で、水墨画の世界のようだった。

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粂野さんと小川さんが先行する。

10:00登攀開始。II級のトラバース。丹羽(ま)さんリード。

II級とはいえ、緊張のせいかしょっぱなからひやひやする。次のピッチのルートに悩み、丹羽(ま)さんが偵察に。ビレイポイントに丹羽(ま)さんがついた途端、上から大きな声。「ラク!!ラク!!」

 

動けない。丹羽(ま)さんの目の前を岩が落ちてくる。有冨さん・自分も、壁にへばりつく。落石の音を初めて聞いた。

先行パーティが落石地帯を抜けるのを一時間半ほどまち、落ち着いたと判断したところで改めて登攀開始。引き続き丹羽(ま)さんリード。Cフェース下部凹角下部の硬い岩とすっきりしたクラックが楽しかった。

14;10。Cフェース中部凹下部。有冨さんリード。ここからは、とにかくボロボロだった。触ると崩れる。そっと乗るだけ。触った岩が落ちてきて、自分の腿に当たる。落とすといけないのでこらえる。左側のチムニーにひっかかった岩に乗るが、不安。先行パーティがある程度落としたとはいえ、たぶんちょっとバランス悪いと崩れる。右側のチムニーに移り、ハーケンにヌンチャクをかけて体を持ち上げる。先行していた粂野隊が残していったスリングをつかんでハングを抜ける。

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到着した場所もまたぐずぐず。有冨さんが不安な場所でビレイしていた。

Cフェース上部。有冨さんリード。非常にもろい。どこもかしこも崩れていく。滝谷は腐った岩場と聞いていた。これが滝谷か。と実感。

儚い岩場も含めて美しい。ときどき霧がふわぁっとあがってきて、クラック尾根にいる仲間をみせたり隠したりする。

 

リッジまであがると目の前は霞がかかっていて、50m先のルートが見えない。有冨さんがそのままビレイをして、丹羽(ま)さん、自分が先を行く。目の前に壁をみるが、ビレイポイントがわからない。そのまま丹羽(ま)さんが先に行き、ビレイポイントを探し、それらしいところでビレイ。Bフェースの取付。

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15:15。どんどん時間が気になり始める。ここはリーダー指示で「とにかくA0でもいいから日没までに抜ける」。経験不足の自分が足をひっぱっているのはわかる。有冨さんが設置したスリングアブミをただただ登り、回収する。ピナクル付近で迷っていたが、先を行った丹羽(ま)さんが、適格なアドバイスをくれる。ピナクルに乗り、そのあとは階段状に登る。

 

17;30。Aフェース(III級、有冨さんリード)。日没が近い。いつもなら早い有冨さんのリードだが、今日は慎重。フォローで登ってわかった。ここもやはり脆い。そのうえ、ロープが屈曲して重くなっているはず。「ローププラス!」と何度も叫んだが、あがらない。たるたるのロープを持って登る。かろうじてロープ張り気味の自分が脆いチムニーを先に行き、中間地点で丹羽(ま)さんのビレイ情報を中継。とにかく抜けないといけないので、泣き言もなにもなし。

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あとはII級のリッジと思ったが、意外と手間取る。丹羽(ま)さんが行ったトラバースがどうしても怖く、動けない。中間支点があるので、回収しなきゃと思うが足が出ず。結局グラグラする岩を使って上から行く。本当は日のあるうちに北穂に行けたはずが、ダメだった。北穂ではクラック尾根を終了した仲間、第一尾根を終了した仲間がずっと待っていた。小屋に泊まっていた方も心配してくれていた。

 

結局テント場に到着したのは22:30。疲れていたはずなのに、みんな、寝ずに待っていてくれた。心配をかけた。申し訳ないと思う一方、あったかいなと思った。ありがたかった。