北穂高岳 滝谷 第四尾根(夏合宿)登攀
2016年8月12日(金)
メンバー L久保田・馬場(記録):小川・杉田
天候 快晴
タイム 涸沢ベースキャンプ(2300m)(3:00)-北穂分岐(5:30)-北穂コル(3087.m)(5:50)-C沢(5:55)、C沢降下(6:20)-コル(7:50)、コル(8:10)-第四尾根取り付き(8:25)-登攀開始(8:40)-ツルム懸垂支点(13:10)-登攀終了(15:10)-縦走開始(15:35)-稜線(15:45)-北穂分岐(17:00)、北穂分岐(17:10)-涸沢ベースキャンプ(19:10)
装備(1パーティにつき) カム1セット(キャメロット)0.5-2/ヌンチャク5/カラビナ8/スリング8/環付ビナ・支点用スリング・ハンマー・ハーケン
昨夜は19時に就寝し未明の2時に全員起床してエッセンを食べ3時に西野OB、永井OBに見送られながら涸沢ベースキャンプ(2300m)(3:00)を発つ。約800m差の北穂のコルまで星が瞬く中、ラテを照らしながら南稜を登る。
常念が見える東の空にオレンジのラインが走ると空は段々と白み始めた。遠くに富士山を見据え、可愛いオコジョに出迎えられながら北穂分岐(5:30)に着く。見上げると大きな松濤岩があり、北穂コル(3087.m)(5:50)よりC沢(5:55)を少し下る。
※右上の大きな岩がまつなみ岩
※とんがった岩のところでハーネス着用
チョキンととんがった岩のたもとでハーネスを装着し休憩後、C沢降下(6:20)。隣の尾根では有冨パーティがドーム中央稜に取り付いて「アンバヨー」とコールする。C沢のはじめは大きめの石がザレた感じだったが、だんだんと全体が脆くなる。
※滝谷ドーム中央稜
直径50cm以上もある岩がゴロゴロと落ち、ホールドになるような岩の角も力を入れて持つと簡単にはがれ落ちる。途中に懸垂支点になるようなハーケンの残置もあったが足並みが揃っているのでそのまま慎重にクライムダウンを繰り返した。
※C沢
遠くのコルに先行パーティが見え、こちらも早く辿りつきたい気持ちでいっぱいになる。まだか、まだか。長い緊張感の果てにやっとコル(7:50)に到着した。
先行パーティがザイルでそこから登り始めたため、一本休憩を入れてからガチャとクライミングシューズに履き替え、コル(8:10)をノーザイルで第四尾根取り付き(8:25)まで登る。
※下ってきたC沢の全貌
※滝谷第四尾根とりつき
1ピッチ目(Ⅲ級)久保田
登攀開始(8:40)する。比較的硬いフェースを40mほど登る。先ほどまでのボロボロアプローチのことを思えば安心感のある1ピッチ目だ。小川さん、杉田さんパーティも杉田さんからリードスタートでツルベで登攀開始する。
※滝谷第四尾根登攀開始
2ピッチ目(Ⅲ級・Aカンテ)馬場
トポにホールド豊富なカンテ40mと書いてあるが、簡単にはがれるホールドが豊富なだけである。体重もかけず軽く足を置いただけで50cmもあろう大きな岩がゴロっとはがれ落ちた。
下に居る仲間とは落ちる方向がズレていて良かったがアプローチ途中に人が居たらと思うとぞっとした。すっかり肝を冷やしてしまい、岩を叩いて確認しながら体重をかけないようにルートファインディングしながらの登攀で時間がかかった。
3ピッチ目(Ⅲ級・Bカンテ)久保田
硬くて傾斜のゆるいカンテが続く快適なルート
4ピッチ目(Ⅲ級・Bカンテ~リッジ)馬場
久保田さんが少し手前で切ったのでBカンテの途中からリッジまでつなげる。
5ピッチ目(Ⅲ級Cカンテ)馬場
傾斜が強くなってくるがグレード通りやさしくて快適である。
6ピッチ目(Ⅲ+級)久保田
脆い凹角とトポには書いてあるが脆さに慣れてきたのと注意さえしていればさほど悪くはない。ピナクルとピナクルの隙間まで登る。
※7ピッチ目ピナクルの間を抜ける
7ピッチ目(Ⅲ+級)馬場
懸垂支点まで20mほどだ。トポにはピナクルの左へ回り込みと書いてあり、図解でも左周りとなっているがピナクルの間に擦り切れたスリングが残置して垂れ下がっている。
これは懸垂支点か?それにしても支点が悪すぎる。ガスがあがってきた滝谷の中、目をこらしてハーケンを探すと上に見つけることができた。
ルートファインディングは合っているのだろうか?かなり不安であるが、ハーケンがある、トポの文面からはそのまま行けと小川さんから伝令が走る。
このまま登るとツルムのほぼてっぺんまで行ってしまうが、トポ図はかなり下が懸垂支点となっている。ハーケンが連打されているところで一旦切って久保田さんに登ってきてもらう。
すぐ後ろに杉田さんもリードで追いついて来る間にトポを見直したら少し上の凹角にハーケンを発見したのでツルムの肩まで久保田さんにリードしてもらう。やや被っていて少しいやらしい。ルム懸垂支点(13:10)に着く。
※ツルムの懸垂支点
ツルムよりロープ1本で懸垂する。懸垂のロープが当たる岩角が浮いていて非常に危険である。乱暴に懸垂するとその岩が頭上に落ちてきてもおかしくない。空中懸垂となる部分もあって不安的極まりない。
8ピッチ目(Ⅳ級)馬場
リッジ左側フェースより苦手なチムニーとなるが丁寧に岩の弱点を見つければ難しくはない。岩が硬いだけで幸せなクライミングである。悶絶している久保田さんの後ろを満面の笑みで杉田さんがリードであがってきた。
※笑顔いっぱい
9ピッチ目(5.10a Dカンテ)馬場
ホールドは多いが被り気味のカンテ出だしを越え、2つめのハングしたカンテを抜ける。核心の抜け口と言われているがここが一番面白い。しっかり見て手を伸ばせばホールドもあり弱点もある。
最後の最後に登攀を満足させてくれるルートである。
※登攀終了地点
全員が登攀終了(15:10)して装備を整え稜線まで縦走開始(15:35)する。稜線(15:45)へ出て長く疲れた足を引きずっての縦走である。北穂分岐(17:00)に着いて、北穂分岐(17:10)よりパートナーごとに分かれて南稜を下山する。
涸沢ベースキャンプ(19:10)に全員が到着し、準備して頂いていたエッセンをありがたく食し、登攀の無事成功と完了に祝杯をあげつつ明日のクラック尾根登攀のため余韻に浸る間もなく20時に就寝した。