夏山・冬山合宿、GW山行2015年本ちゃん

夏合宿 剱岳 源次郎尾根Ⅰ峰上部フェース成城大ルート 2015.8.15

015年8月15日(土)

メンバー L吉村、馬場

記録 馬場

タイム 起床(02:30)- 真砂沢テント場(03:45)-源次郎尾根出合(05:00)-源次郎尾根分岐(06:30)-成城大ルート取付き(07:30)-登攀開始(07:45)-登攀終了(12:05)-下山開始(12:45)-源次郎尾根分岐(13:40)-源次郎尾根下山(15:25)-真砂沢テント場(16:10)

 午前5時に幕営地を出発予定だったが私の足の遅さにより抜かされるのが嫌なので少し早めに出発時間を設定してもらった。

 星が瞬き、晴天が予想される今日は二日も沈殿した甲斐のある最高のアタック日となるであろう。

 前日の偵察で源次郎尾根Ⅰ峰平蔵谷側下部フェースの中央ルンゼは滝となっており、手前の中谷ルートも脆そうで時間もかかることが予想される。予備日がないため源次郎尾根Ⅰ峰平蔵谷側上部フェース 成城大ルートのみアタックすることにした。

 夜の雪渓登りは先を急ごうにも歩き辛かった。剣沢からたくさんのクライマーが長次郎谷を目指し下りて来てはすれ違う。源次郎尾根の出合で縦走パーティと出会うが彼らは若いお兄さんばかりなので先に行ってもらう。こちらは中年クライマーですから。次に来たのが縦走目的の中年パーティなので手早くアイゼンを外して準備する。 空が白み始めた頃、私達は源次郎尾根の縦走路に取り付く。

 グングンと高度をあげていくと、源次郎尾根の第一関門である場所で前のパーティに追いつく。まだ身体の硬い時間には厳しい場所だった。お助けロープを使わせてもらい何とか登る。第二関門で、またも前のパーティに追いつく。縦走路とⅠ峰平蔵谷側上部フェースへの中央バンド分岐でさらに5人の前々パーティにも追いつく。

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 私たちは待っている間にトポをみて取付きチェックをする。よく晴れた空に弓形クラックと大カンテが顕著である。取付き点の目星をつけておく。前パーティは縦走だが、前々パーティは同じ成城大ルート狙いだ。5人パーティのうえ、縦走路でロープを出して登るぐらいだから出来れば先に取付きに到着したい。

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 分りやすい源次郎尾根縦走路の分岐から踏み跡がハイマツと草で見えにくいルートをトラバースして中央バンドに入る。中央バンドを少し登ったあたりで5人パーティは分かれて成城大ルートの取付き点を探している。

 ここからは吉村さんの嗅覚でお願いします!と、中央バンドをグングンとつめてもらい、そのままフェース側に登りたいところを我慢してハイマツの左側を少し登ってからハイマツを横切り、ざれた極小ルンゼを落石に注意しながら登るとくぼんだ小さな洞穴状の取付きにでた。

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 取付き点を確認したのはほぼ同時だったかもしれないが、パーティがそろったのはこちらが先だと言うこともあり、先行を譲ってもらえた。

 成城大ルートの取付きは錆びたハーケンが二つほどあり、7人が立って登攀準備ができるほどのスペースがある。待たせては申し訳ないと私達は急いで登攀準備をする。

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(1ピッチ目 Ⅲ級 30m)吉村:カンテ左の草付の凹角

 グレードは低くても侮れないベッタリと濡れた岩場からのスタートである。手や足場のホールドはしっかりあるが、1ピッチ目は緊張感いっぱいだ。ハイマツを掴み、ランニングを取りながら残置の支点があるところまで登る。馬場がセカンドで登っていたら、後続パーティのリードがグングン登ってきて少々焦った。

 (2ピッチ目 Ⅲ+級 20m)馬場:カンテから右へ回りフェースを登りテラスへ

 後続が追いついてくるのでサッサとつるべで発つ。ルートはトポに書いてある通りだが残置ハーケンが心もとない。やっとみつけたクラックにカムをセットしようと試みるが岩がパカパカしていたので諦めて、そのまま我慢してテラスまで登る。ちょっと一息つけるハイマツテラスだ。

 (3ピッチ目 Ⅳ級 20m)吉村:カンテ左のすっきりしたフェースから凹角

 ここから右に出れば名古屋大ルートで左が成城大ルートである。テラスにでてビレイ点

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 (4ピッチ目 Ⅴ+級 45m)馬場:凹角からバンドを左へトラバース、クラックを登り、再び左に行きクラックを登る。

 トポをしっかり確認する。ダイレクトルートを横切るロングコースだ。次のビレイ点がまったく見えないので少々不安だ。しかも、かなり立っている。数メートル直上したら残置ハーケンがあり、それらにランニングをとっていくが落ちたら確実に取れてしまいそうだ。

 いよいよ核心のトラバースだが、墜落したら振られて怪我をする確立が高いだけに慎重になる。足のホールドは比較的しっかりしている。トラバースすると一つ目クラックとなり、そのルートを見上げ弱点を探す。そして「これって、フリールートか?」と叫ぶ。立っているだけじゃなく、やわそうなフレークっぽいクラックがお見合いしている。ケチってきたカムを2つセットする。失敗は許されず怖すぎる。ムーブを組み立てるがこんなところでレイバックはできない。フェース登りではあるがガストンで吠えながら身体を持ち上げる。気持ちで負けると滑ったり落ちたりするので気合をいれるしかありません!ここからは自分の呼吸と吉村さんとのコールしか耳に入らない集中モードです。

 かなり登ったと思うのにまだダイレクトルートの真下をトラバースしている。どこかで残りのカムを2つ使う。カムを4つしか持っていなくて吉村さんに借りなかったのをひどく後悔する。

 「あと残り10m」コールが入る。見えない先にビレイ点があるのか?40mのルートだからそろそろ終了のはずなのに何も見えない。

 貧弱な支点をとりつつ最後のほうは持ち手のタマがなくなってきて、甘いピナクルでランニングをとりクラックを乗りあがる。やや安定したレッジにでたら錆びたハーケンやリングが6個ほど連打してあり、そこでロープの残りを確認する。「残り5」見上げるとテラス状になっているだろう場所が見えるが、そこまでは5m以上ある。ビレイ点は錆びたハーケンやリングが6個ほど連打してあるレッジでとることにした。

 3人パーティで登っている場合はどうするんだろうと思うぐらい狭いレッジとテンションのかけられない支点だ。残り少なくなったスリングとビナで固定分散にてビレイ点をセットした。

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(5ピッチ目 Ⅴ+級 10m)馬場:左から上がり、フェースを登る

 リードを変わろうか検討したが、レッジが狭くて入れ替われず、そのまま続登したほうがスムーズなので馬場がリード継続。

 気持ちがいっぱい、いっぱいになっているときに冷静に確認、判断して作業してくれる吉村さんにかなり助けられました。

 残り10mほどだろうけれど、次のハーケンが見つからない。1mほどトラバースすると上につながるハーケンが見つかった。しかし、スタンスがない出だしクラックだ。フリーで試みるが、こんなところで落ちたら元も子もないとA0で離陸してハイマツ手前で終了。

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 (6ピッチ目 Ⅱ-Ⅲ級 45m)吉村

 木登りは得意と吉村がグングンとハイマツの中を泳いでいくが、馬場はスタンスのみえない場所は苦手である。ズルズルと足元を滑らせつつハイマツを掴んで登る。

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 (7ピッチ目 Ⅲ級 40m)吉村

 ハイマツと岩溝をくぐりぬけ源次郎尾根の縦走路にでて登攀終了。二人で固く握手をして登攀成功を称えあう。

 元気なら剱岳本峰を踏んで帰りたいと言っていたが、お腹いっぱいの満足度と疲労でそんな気にもなれず、ゆったり流れる雲と青い空、剣山のように剱岳山頂に立つ登山者を眺めつつ充実感に浸った。

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 名残惜しく下山を開始する。ここからが馬場にとって、次の核心でもある。緊張がとけ、ふにゃふにゃになった足腰で最後の踏ん張りどころであるがザレた足場にヨタヨタとする。怪我をせずに戻れてナンボなので、ゆっくりと時間をかけ、怪しいところでは懸垂のロープを出してもらう。やっと平蔵谷の出合まで下山でき、一安心する。

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 剣沢の雪渓をのらりくらりと歩いて下りて真砂沢ベースキャンプへ無事に帰還しました。

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 脆くはないけれども落石がないとは言えないのは普通。貧弱な残置ハーケンやリングに手持ちカムの少なさ、長いトラバース、ルートファインディング。想定していたよりも辛かった印象です。フリーのムーブやバランス感覚も必須だと思いました。

 それでも完登できたのはパートナーである吉村さんが心強くて助けられた部分も多く、自分に足りない体力や歩荷力を補ってくれた仲間に感謝です。

 補足:装備 カム0.3/0.5/0.75/1.0(2セットあると安心) スリング(残置ハーケンに通せる細さ) ヌンチャク カラビナ

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