横尾尾根~槍ヶ岳
2016年12月29日(木)
メンバー L吉村、粂野、小川よ、福島子、吉居
1日目記録:吉居
タイム 1日目:新穂高温泉(6:12)-安房トンネル(7:15)-釜トンネル(7:45)-上高地(9:20)―横尾(12:20)-3のガリー(13:40)-コル(16:00)幕営
合宿…苦しくも楽しい山岳会の大イベント。特に冬は1年の集大成なので皆気合いが入る。8月入会の私は登山にブランクがあり体力面で不安があったが、久々の冬のアルプスで気分も盛り上がっていたので、皆に遅れをとらないようトレーニングに励み合宿に臨んだ。
前日28日は20時に名古屋駅集合し、新穂高温泉の無料駐車場で車中泊。夜はかなり冷え込んだ感じがした。翌朝6時10分の高山方面行きのバスに乗車し平湯で下車。タクシーの営業範囲の都合で安房トンネル料金所まで歩いて予約したアルピコタクシーに乗車した。
釜トンネル入口では長野県警が登山相談所を開設して積雪状況を教えてくれた。今年は雪が少なく横尾尾根P1から詰めると藪漕ぎになるという。雪が締まっていれば3のガリーも可能とのアドバイスもあった。
さて、釜トンネルから登山開始。上高地までの車道歩きは路面にうっすら数センチ積もっている程度で雪は少ない。明神館で休憩の時、以前明神岳東稜で雪崩事故が逢った事を聞き、加藤・濱松に黙祷した。
上高地から横尾までの道も溶けた雪が凍結して歩きづらい。釜トンネルから横尾まで約5時間、単調な歩きに忍耐力を要したが、穂高の稜線が見渡せるほど天気良く気分は明るかった。
横尾12時半で程良い時間だが、予定通り先に進む事になった。尾根には3のガリー経由で上がる事になり横尾橋からは粂野さんがトップを行った。先行パーティのトレースが夏道沿いについていて、約1時間歩いたところで赤テープが2~3本固め取りされている所が3のガリーの入口だ。入口は平坦になっていてガリーの入口のような雰囲気でないので気を付けないと通りすぎてしまうが、すぐ本谷橋が見えるので行き過ぎた事に気づく。
夏道から20分程度進むと傾斜のあるガリーに入った。デブリが堆積しているがここ数日の晴天のためかガリーに雪な少なく雪崩の心配はなかった。ガリーは上部で45度位の傾斜でクラストしており足場が不安定になり滑落注意。私は調子良く登っていたが、コル目前で急に息が上がってしまいしばらく歩けなくなってしまい皆さんに迷惑をかけてしまった。
ガリーを2時間かけてコルに着いたが6人用テントを張るには狭すぎる(3人用程度なら1張可能)ため、吉村さんが幕営地を探しに行き、コルからP4へ数メートル上がった斜面を整地した。今日は3ガリーで疲れた(合宿中一番疲れた1日だった)が、今日中に尾根に上がっておいて翌日の行程に余裕ができて良かった。
夜はガスがかかり雪が舞っていたが、横尾尾根は稜線の風下側なので多少天気が悪くても行動に支障はないだろうと思った。この日は20時就寝し明日に備えた。
2日目記録:福島
タイム:2日目出発(7:05)-横尾の歯(12:10)-P8の頭(15:15)
2日目、5時起床。朝食のうどんを食べてからテント撤収。風もなく青空の穏やかな天候の中、7時5分、P4への登りを開始する。
ウォーミングアップもくそもないイキナリの急登で大きく足を上げて行く。背負っている荷物は25キロを超えており、膝より上に足を上げると体が持ち上がらず起きたばかりの身体には堪えた。自分がもたもたしていると後ろから小川会長が足場や登り方のアドバイスをくれた。どうにか少しずつ高度を稼いでいく。P4を越えると、視界が開けて素晴らしい景色が広がり感動する。冬に自分が北アルプスに入ることになるなんて今まで考えたこともなかった。そのままゆっくり尾根伝いに先頭を交代しながら膝下ラッセルで進む。
12時10分、横尾の歯の取り付きに到着。見れば両側がスッパリ切れ落ちている。自分はついつい『マジですか…』と、つぶやいてしまう。ロープを出し粂野さんがスタンディングアックスビレイで確保する中、吉村さんがリードで登攀開始。
重い荷物を担いでいるのにそれを感じさせず的確に支点を取りながら登攀する吉村さんを見て、内心その落ち着きぶりに驚いていた。その後、『いいよ!』と、吉村さんの声が聞こえた。
吉居さんがカラビナのかけ替えでロープに沿って登攀開始。スムーズに登りすぐに見えなくなった。
粂野さんが『もう行っていいよ』と、自分を見る。緊張しながら登攀開始。雪と氷が付いた岩をゆっくり登っていく。足を大きく上げるところやトラバースで時間を使ったが、後ろから小川会長が足場や持つ場所を指示して下さりどうにか越えられた。
トラバースのところにボロボロの残置スリングや、ところどころ錆びたハーケンが打ってあったが、どれも心もとなく、ロープを出すのが必須だと思った。核心の横尾の歯を越えたらあとは楽勝と思っていたのに、その後も自分にとっては『ナイフリッジ』のような細尾根を強風におびえながら進み、15時15分P8を越えたコルで幕営となる。
幕営地は最高の眺望で、右の奥に槍ヶ岳の雄姿が夕日に映え、思わず歓声を上げた。立派なトイレも2つ。1日目の斜めった幕営地とは正反対の住み心地のいい幕営となった。夕食はすき焼き。お肉をお腹いっぱい食べて20時頃就寝する。
3日目記録:粂野
タイム:3日目出発(7:10)-中岳(11:00)-大喰岳(12:50)
3日目。5時起床。P8手前2700m辺りのせいか、前夜より寒い朝を迎える。SOTOに火を着けるとテント内が直ぐ暖まる。SOTOは凄いな~。初めてエビ風味のスープパスタを食べる。美味かった。
今日も快晴、白い槍や穂高を見ながらテント撤収。
7時10分出発。粂野先頭で順調に進み小ピークを2、3超えて天狗原分岐コルに着く。主稜線まで高低差300m位かな?かなり急な斜面だ。息を整えて登る。吹き溜まりに嵌ったり、硬い雪面に前爪を刺したり高度感に緊張を交えながら確実に一歩ずつ進む。ダブルアックスのおかげで楽に登れた。
9時手前、主稜線に出る。飛騨側からの強風に吉村Lから凍傷注意の指示がある。槍を見ながら氷化した稜線を確実にアイゼンを利かして行く。中岳手前の広い雪田?でガスが出る。方向を間違えないように中岳の尾根に上がった岩陰で一息。 ここで福島さんが手の指先不調有り。アウターが五本指だ。吉村Lの予備のミトンに交換した。
中岳11時、強風で舞う氷雪が顔に当たり痛い。中岳からハシゴ2本を含む下りを安全の為に50mぼどフィックスを張った。アイゼンで鉄ハシゴはやらしい。
そこからは東側に張り出した大きな雪庇と西側の氷化斜面に注意しながら歩く。途中、吉居さんスリップでヒャツとする。大喰岳手前で吉村Lよりストップが掛かる。福島さん体調不良。寒さ感じず反応も曖昧との事。ダウンを着て吉居さんの介抱で少し元気を取り戻し、進むと目的地の大喰岳に12時50分着。
手が届きそうな槍ケ岳を正面にテント設営する。後は暖かいテントで、ノンビリとお酒を呑んだりして、とても贅沢な時間を過ごした。
4日目記録:吉村
タイム:4日目出発(8:15)-槍平(11:05)-新穂高温泉(14:30)
4日目、5時起床するが、外は吹雪で視界不良。昨日の残りを使って豚汁雑煮を食べる。6時からアタック待機をするが、なかなか天気が安定してこない。
7時過ぎの偵察で、西尾根の下降口を確認。前日に槍ケ岳を登ったパーティが今から下るようだ。槍ヶ岳アタック、行って行けれないこともないが、わざわざ悪天候の中行く必要もない感じもする。今回のメインイベント横尾尾根を越えたことで、確実に下りたい。アタックして戻ってきた時、遅くなると、もう1日この場所か槍平小屋近くで1泊する必要があるかもしれない。
7時半に槍ヶ岳アタックを止めて、予定日程通りに下山できるようにする。テント撤収で飛ばされないように注意しよう。福島さんにテント本体を畳むまで中で重石になってもらう。
8時15分に出発。下降口の段差で堅い箇所があり注意する。少し吹雪いている中下りだす。上空が少し明るくなってきて、視界も晴れるようになる。中崎尾根や西鎌尾根から槍ヶ岳目指す人が多い。
飛騨沢でテントが1張り。何故あんな所にテントが思う。慎重に滑落しないように下る。ヘリが槍ヶ岳に向かって来る。正月の中継か何かか?
宝の木に着く9時50分ころ、ヘリが飛騨沢のテント上空でホバリングを繰り返す。何か事故があって、あの場所にテントを張ったのだろうか?遠めで見てるからわからないのか、なかなかピックアップしない。雪が少し深くなり、粂野・小川は輪かんを着ける。だいぶいい天気になり暑いくらいだ。
11時5分に槍平小屋に着く。途中、彩雲が見られた綺麗だ。初めて見ただろうか?残念ながら写真では虹の部分が上手に写せなかった。雲の中に虹色が3段重ねになっていた。
滝谷からドームなどが見える。雪が着き濃淡がはっきりして格好良く見える。白出沢からも山が綺麗に見える。14時半に新穂高温泉に着き、下山届を提出する。
中崎山荘で入浴。そこで昨日飛騨沢で滑落事故があった事を知る。入浴後、携帯の電源を入れると待機メンバーが心配していたようで、わざわざ高山署に確認までしていた。ありがとう。
帰り高山市内、中山そば店でけいちゃん定食などを食べて帰名した。