日程:12月28日(月)~1月1日(金)

メンバー:L丹羽だ(記録)、澤、田中

 

名古屋山岳会が2015年で80周年を迎えた。そして個人的なことではあるが、発起人であり、今回リーダーを務めた丹羽も入会してちょうど10回目の正月を迎えた。この10年間、海外山行は田中君単独でのキルギス・レーニン峰(7130m)しかでていないと記憶する。会で結束して海外山行が出せたら素晴らしいのではないかとの気持ちから、今回ニュージーランド・マウントクック(3724m)にいってきた。

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なぜマウントクックかというと、標高が低く条件が合えば短期間で登頂が狙えること、氷河をまとった山であること、そして正月の時期に登山適期を迎える南半球に位置する山という理由から選定した。

 

12月26日 13:00名古屋駅で集合。丹羽は胃腸風邪?気味で薬を買っていざ中部国際空港へ。飛行機は広州経由でクライストチャーチへ。

 

12月27日 17時過ぎにクライストチャーチに到着。入国審査に長蛇の列。更に、税関通過に時間がかかる。登山靴の裏の土の付着をチェックされ、テントを持っていると申告すると、洗浄するとのことで奥の部屋に持っていかれた。環境保護に非常に厳しい。税関の申告書には30日以内にキャンプの経験はあるかなどの質問項目もあった。税関通過を終えると、今度はレンタカーの手続き。

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これまた店のスタッフが1人しかいないので時間がかかる。車はホールデンという聞いたこともないメーカーのものだった。

 やっとのことで空港を出発できたのが20:30くらいか。今度は買い出しだ。空港から市街地に向かって少し車を走らせるとスーパーがあったので寄って行くが、しばらくするともう閉店時間だからと追い出される。24時間のスーパーもあるとの話なので適当に車を走らせると23時まで営業のスーパーがあったので、ここで全ての食糧を調達する。

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ただ、時間があまりなかったのと、商品がよくわからなかったので予定にしていたメニューは再編された。

 食糧調達完了したところで、いざマウントクック村へ。330キロの大移動だ。ただ市街地以外に信号がなく下道でも法定速度が100キロなので移動時間は4時間ちょうど。夜中のマウントクック村へ向かう一本道にはたくさんのウサギが跳ねていて、車で撥ねたくなくても撥ねてしまう。かわいそうだが避けたくても避け切れないのだ。

 

12月28日 3時にマウントクック村に到着するも、まだ村内は真っ暗なので車内にてしばし仮眠。8時くらいに起床、天気は快晴ですばらしい。

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自然保護省(DOC)に入山届を出しに行く。ここでは入下山届の受付と山の状況、小屋の混み具合などがわかる。簡単な道具から、地図も販売している。

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地元のレスキュー隊に山の状況を聞くと今年は氷河の状況が悪いから行くなとは言えないが、やめた方がいいと散々脅される。その人はしきりに違う山に変更するようすすめてくる。ただ、他の山にたいして何の情報も持っていないし、マウントクックを近くから見るだけでもいいからと予定とおり入山することにする。あとマウントクックのベースとなるプラトーハット小屋は無人なのでDOCで予約できるか聞いたが寝るスペースは30床くらいあり早い者勝ちであるとのこと。ここら周辺の山小屋は毎日の無線交信で人数をしっかり把握している。プラトーハット小屋は空いているそうだ。ちなみに1泊36NZ$の料金がかかる。

 入山手続きを済ませ近くのカフェで朝食を摂りマウントクック空港へ移動する。

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しかしコカコーラが4NZ$とは、ちょっとこの国は物価が高い気がする。マウントクック空港はDOCのあるマウントクック村から南へ来た道を4キロくらい戻るとある小さい空港だ。国内線が離発着するような空港ではなく、遊覧飛行やプラトーハットなどの各登山拠点まで輸送してくれる為の小さな空港だ。11時過ぎに到着するが12時半に予約を入れていたので待つよう言われる。が、時間が来てもなかなか案内されない。忘れられているのか、結局空港を出発したのが13時半近くになっていた。何はともあれいよいよ入山だ。初めて乗るヘリコプターに興奮。

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離陸の時機体が前のめりになるのが、少し怖い。ヘリでの空の旅は山の近くを飛んでくれ景色が良くて気持ちが良い。15分くらい飛ぶとプラトーハットに到着した。

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 天気は快晴。すでに今日の活動を終えたパーティが小屋の外で日向ぼっこをしている。標高2000mなのに意外に暖かい。小屋の中に入ると日本語が話せるニュージーランドの山岳ガイド、ジャインさんという方に声をかけられた。この方にはこのあとずいぶん助けられた。聞くと好きなスペースで寝ていいとのことで既に寝袋が2つ敷いてある5人部屋に我々3人が入ることにした。

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現在のプラトーハットは2005年に建て替えられたそうで、トイレが小屋の外に完備され、水は雨水を溜める巨大な水槽が用意されていている。小屋の中には寝るスペースと食堂がありキッチンにはコンロが何台もある。燃料は外にあるプロパンか。鍋や食器類も完備されていて非常に快適だ。この日は時間も遅いので小屋周辺を観察することに留める。

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小屋の西側に大きく聳えるマウントクックが雄大だ。登山ルートであるリンダ氷河は、小屋の前に広がる雪田のようなグランドプラトーという氷河を横切らなければならない。

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ここにはいくつもの亀裂が入っている。リンダ氷河はその奥に右上している氷河で、ボロボロに見える。時々、雪崩や氷河が崩壊する音が聞こえる。暖かいし本当にあんなところ登れるのかと思ってしまう。

 夜19時になるとDOCと無線での交信時間だ。ジャインさんが仕切って報告してくれた。食事を終えて就寝。

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外は21時でもまだ明るい。だいたい日没は22時くらいだ。

 

12月29日 4時に起床。5時半に出発。天気は快晴。小屋の前でN型アンザイレンを結ぶ。いよいよ緊張の氷河歩きだ。

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まずは雪田のようなグランドプラトーを突っ切る。ところどころクレバスが開いているが問題は無い。30分くらい比較的平坦なグランドプラトーをいくとトレースが二手に分かれていた。右がマウントクック、左がシネラマ峠の東側にあるアンザックピーク(2513m)に向かうトレース。ガイドパーティがお客さん連れて足慣らしに登りに行っているピークのようだ。我々は右のトレースに進む。リンダ氷河に入ると徐々に傾斜が増していく。

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クレバスも大きいのがたくさんでてくる。右に左に蛇行しながら登っていく。

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トレースに辿っていくと、走り幅跳びしても渡るのに厳しそうなサイズのクレバスが出くわす。

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新しいトレースをつけながらポイントを探していると、スノーブリッジを発見したのでビレイしながら渡る。

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頼りないブリッジで崩れるとクレバスに転落するだけに緊張する。

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そんなズタボロのリンダ氷河を3時間程詰めていくと、大きく氷河が左に屈曲するポイントに到着する。時間は9時くらい。

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ここで少し休憩をとって下山開始。気温もドンドン上がってきて、クレバスが開くと往復で同じ場所が通れるとは限らない。往路同様慎重に進み10時半にプラトーハットに戻ってくる。翌日は天気が悪くなるとの予報だったので、停滞して翌々日にアタックにすることに決定し小屋でのんびり過ごす。

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12時間睡眠をとった。

 

12月30日 この日は終日待機。

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朝の天気はそこまでくずれてなかったが、午後にかけて山の上部は雲の中。この日は僕らより早く入山していた九州からの日本人2人を連れたガイドパーティが山頂に向かっているようだ。彼等は0時30分から登り出して16時半くらいに小屋に戻ってきた。いよいよ翌日は僕らもアタックなので、それに備えて17時に就寝する。

 

12月31日 まだ日が替わる前の23時に起床。朝食?を食べて0時15分に出発する。天気は薄曇りなのか、星が見えない。まだ真っ暗の中氷河をいく。

 途中、偵察時にロープ出して渡ったスノーリッジを通過しなかった。どうやら違うところを登ったようだ。2時間くらい登ったところで後続が追いついてきた。日本語ペラペラガイドのジャインさん率いる6人ガイドパーティが追いついてきた。たしか1時出発とのことだが、なぜそんなに早いのか。残念ながら抜かれてしまったので後を追うことにする。

 リンダ氷河が大きく左に屈曲する地点で6人パーティのうち歩くのが遅い4人を抜く。トップをいくアンザイレンをした2人の後ろについて高度を上げていく。2時間くらい詰めたところでガイドパーティが休憩?をとったので目の前の雪壁をダブルアックスのタガーポジションで登っていく。途中、コンテだがスノーバーを打っていく。目の前に巨大な岩壁が迫ってきた。どこから取付くのか悩んでいると、正解はもっと左にトラバースしてザルブリッケンリッジに上がるようで、ガイドパーティはトラバースしていってしまった。僕等も雪壁の上部を下り気味にトラバースしていく。

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リッジに上がると岩場が出てくる。サミットロックだ。5時頃でようやく夜が明ける。岩場はまず最初の岩峰を右に巻く。

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すると幅のあるルンゼがでてくる。取付きにはアンカーがあるのだがナッツを使って構築してあった。傾斜はそんなにないがスリップすると下のクレバスまで滑落するであろう、腐りかけた雪のルンゼをスタカットで2ピッチ登り、再びリッジに戻る。

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更にコンテで1ピッチ、スタカットでⅢ級程度の氷混じりの2ピッチを丹羽、田中リードで登る。

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ピッチごとにワイヤーで支点が構築されているがランナーはほとんどない。

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サミットロックを抜けるとあとは雪稜を歩くのみ。まずまずの急登だが、ロープを外して晴天に変わった稜線を頂上目指して登る。

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9時15分登頂。どこが一番高いところかわからないナイフリッジが遥か彼方まで続いている。ちょっと厳しそうだ。

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少しナイフリッジを歩いたところで終了とする。

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 下りは慎重にロープを出して行く。高度感のある下りだ。ところどころ残置のスノーバーやアイススクリュー、ブイスレッド+シュリンゲがある。

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サミットロックは懸垂下降。60mザイルなので折り返すと短い為、なかなか下りるのに時間がかかる。ザルブリッケンリッジの取付きまで下ると、あとは氷河歩き。アンザイレンをして慎重に下る。

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朝よりクレバスが開いているのか立ち幅跳びでは届かず片足だけ落ちたりする。途中ノースリッジの脆い岩が大崩落する。気温も上がってきているのでクレバスやセラックの崩壊がこわい。

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休まず下山する。グランドプラトーから小屋までは標高差100m程度の緩やかな登り。17時間行動してきている身には堪える。

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澤くんはバテバテだったが、何とか全員下山した。

 

1月1日 ジャインさん率いる6人組パーティは9時半に迎えにきたスノープレーンに乗って下山していった。あとから来るのに乗れとのことで小屋から少し離れたところで待機するもなかなか来ない。

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2時間以上待ってようやく来たスノープレーンに乗ってマウントクック空港へ。

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帰りはマウントクックのイーストリッジを登ってきたというアメリカ人2人とシェアした為、飛行機代が安く済んだ。

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下山届をDOCに出してクライストチャーチへ戻り安宿にて投宿。

 

1月2日 クライストチャーチにて土産などを物色したりして適当に時間を潰していると屋台の店先に、1面記事に山の写真が載った新聞を発見。どうやらマウントクックの隣の山で28日に遭難があったそうだ。

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そういえば帰りの飛行機を待っているときに同じ場所をヘリが行ったり来たりしていた。最初は遊覧飛行だと思ったのだが。それに僕等が泊った部屋の荷物の持ち主とはとうとう最後まで会わなかった。

 現地に語学留学で残る澤君と別れ夕方空港へ。帰国開始。

 

1月3日 乗り継ぎなどの待ち時間が長すぎて疲れたが16時に中部国際空港に到着。