期間2016年12月28日~2017年1月2日 メンバー:L坂口、田中
タイムレコード:12/28釜トンネル4:55~上高地6:45~明神7:45~徳沢8:30~八峰支尾根2,220m付近テント場16:00 12/29テント場6:20~八峰10:00~5.6のコル12:30~4.5のコル14:30 12/30停滞 12/31 4.5のコル4:20~北条・新村取付7:00~4.5のコル21:00
記録12/28~31 坂口
1/1~1/2 田中
10年ぶりに年末年始の長期休暇を手に入れた。少ない休みで下山日ばかり気にした山行ではなく、厳冬期の北アルプスに浸りたかった。ある程度日程に余裕がないと取りつけないルート、力を出し切ることができるルートに登りたいとの考えが今回の計画につながった。四峰正面壁北条新村ルートは会の先輩が冬季初登したルートで、壁の弱点をついた名クラシックルートである。何十年も後に後輩が足跡を追うことが会の冬合宿山行としても良い記念になるのではないかと思った。結果は、怖い思いもたくさんしたが、思い描いたどおりの山行となり、満足いくものとなった。パートナーの田中君、下山連絡を担当頂いた有富さん、会員の皆様に感謝したい。
12/28
沢渡に4時に到着するようにタクシーを予約していたが、トラックがスリップし、道を塞いだせいでタクシーの到着が遅れる。4時55分に釜トンネル入口から歩き出す。気合は入っているのだが、25kgのザックが重く感じる。トンネルを越えて徳沢までは、数日間の好天が続いた影響なのか雪が少ないように感じた。
雪質は春山のようであった。雪崩のリスクは少なく、慶応尾根2,100m付近まで夏道が早いと考え奥又白谷を夏道に沿って進んだ。奥又白谷は前穂上部からの雪崩のデブリがあり、圧倒された。
デブリを横切り、慶応尾根を南側から取りついた。急登のせいもあってペースがおちる。本来夏道に沿って北上する場所をいつの間にか西よりに進んでしまい、八峰南東方向の支尾根に入ってしまった。急登と藪こぎで苦労する。16時頃、テントを張れるスペースをみつけ、1日目を終える。GPSで高度を確認すると2,220mであった。もう少し高度を上げたかったが仕方ない。
12/29
6時20分出発。天気は晴れ。辺りはまだ薄暗い。東の方向にしっかりした尾根がみえる。その尾根上に他のパーティーのヘッドライトの明かりが照っていた。たぶんその場所が慶応尾根なのだろう。朝一番から足元は急な岩交じりの雪壁と、頭上は背の低い木々の間を潜り抜ける不快な登りを強いられる。八峰がなかなか見えてこない。ずいぶん先を歩く他のパーティーが見える。登り始めて3時間半経過した10時にようやく八峰に到着する。八峰からはしばらくなだらかな尾根歩きが続く。
6.7のコルは思ったより広く、5.6のコルと間違えるほどであった。5.6のコルには12時半に到着。晴れ渡っていた空は徐々に雲が多くなり、風が強くなる。目的地の4.5のコルに14時半に到着。明日の四峰正面壁のアタックを考えると、早めに到着はうれしかった。4.5のコルには大きな岩があり、岩の周りの雪を削り、テントを設営する。
しばらくすると曇っていた空は雪に変わっていた。起床は2時半として、降り続ける雪を気にしながら就寝する。24時頃目が覚めるとテントが雪で埋もれかけていたので、田中君を起こし、交代で雪かきをする。外は40㎝ほどの積雪。D沢は雪崩の危険性が高く、30日のアタックは中止とした。このまま前穂高岳頂上に向かうか判断に迷ったが、30日の予報は晴れなので、雪が安定することを期待して、1日4.5のコルで停滞することにした。予備日は2日あり、1日粘って、沢の様子をみてダメなら頂上に向かえば良いと考えた。
12/30
朝、昼、夜の食事以外はほとんど寝てすごす。登攀前にしっかり体を休めることができた。夕方テントからでると新しいトレースが出来ていた。直接言葉を交わすことは無かったが、今回の北尾根には思ったより多くのパーティーが入っていた。年末だけで5パーティーくらいは入っていたように思う。
12/31
2時半に起床して、4.5のコルを4時20分に出発、空気は冷え切っていて、雪はしまっていた。1日待った甲斐があった。しかし、D沢を100mほど下ると雪は股下まで潜るようになり、逃げ場のない沢の中で生きた心地がしなかった。
奥又白谷まで下らずに200mほど進んだところで正面壁下部岩壁をT1に向けてトラバースするために、雪壁にとりついた。初めの3~4mが4級の登りでロープを出そうか迷ったが、ノーロープで進む。
その後も草付きの急雪壁で、取りついた場所が正しかったのか不安になる。雪壁を岩壁基部まで詰めた場所から左にトラバースし続ける。だんだん辺りが明るくなり、四峰正面壁の全容が目に入ってくる。取りついた場所は正しかったようだが、夏とはあまりに異なる景色で、自分たちがどこにいるのかよく分からない。北条新村ルートの取りつきを探しながら左にトラバースし続けているとC沢が見えてきた。
行き過ぎたことがわかったので、そこでビレイ用のアンカーをつくり、ロープをだし、坂口リードで取りつきを探しながら今度は右にトラバースしていく。時間は7時。出発から2時間半が過ぎていた。50mほどトラバースしたところでピッチをきり、さらに坂口リードで右に10mほどトラバースしたところで登れそうなガリーを発見して取付く。ここが実質の1P目。暗かったので最初は通り越してしまったのだろうか。見た目より悪く支点がとれない。10mほど登ったところでやっとピトンが打てるリスを発見して1ピン目をとる。安心して上部を見渡すとハイマツテラスに向かって伸びるガリーが見えた。どうやらラインに乗ったようだった。さらに5mほど登ると残置のビレイ用アンカーがあり、そこでピッチをきる。
2ピッチ目は田中君。60mいっぱいでハイマツテラスに届きそうに見えたので、そのように話してスタートする。ランナウトしながら慎重にロープを伸ばす。
ガリー取り付きから1P目と2P目はほとんど支点が取れなかった。30mロープを伸ばした所でピッチを切りたいとのコールがあり、ハイマツテラス直下のガリーの3P目は坂口がリード。そこは残置支点が豊富で、カムが決まるクラックもあり、安心して登れた。ハイマツテラスは雪で埋もれていた。
続いてのハングを超える4P目は坂口がリード。出だしから雪で埋まったホールドをアックスで掘り起こす作業で腕にくる。ハングに入ってからは慣れないアブミを使った登りに苦労する。フィフィを持ってこなかったことを後悔する。このピッチに2時間を費やし、抜けた頃には15時を過ぎていた。続くフォローの田中君も1時間かかり、5P目を田中君がスタートする頃には辺りが暗くなり始めていた。
トラバースからカンテを登るこのピッチがルートの核心。田中君は体を壁に押し付け悪いトラバースを一歩一歩進んでいくが、カンテまでの途中で2回フォールする。前のピッチで腕をかなり消耗していたせいか、カンテまでが限界だった。
そこでピッチをきり、6P目となるカンテを坂口がリード。また出だしからホールドの掘り起こし作業。カンテを抜けて草付きを一段上がると大きなスラブがあり、残置のビレイ用アンカーでピッチをきる。最終7P目を田中君がリード。草付きを20mほど登り、傾斜が緩くなったところでピッチを切り、そこで登攀終了。そこから右に150mほど雪壁を右にトラバースすると北尾根のルートにでる。懸垂を交えて4.5のコルに戻ると時間は21時となっていた。戻って来られたことに安心したが、翌日からの前穂高岳、明神岳主稜の行程を考えると気が休まらなかった。夕食をすまし、就寝する頃には24時を過ぎていた。
1/1 4.5のコル8:00~前穂高岳14:50~明神岳手前のコル16:30
1/2 明神岳手前のコル4:50~2峰8:15~上高地14:40~釜トンネル16:35
1/1 雪時々晴れ
朝早くあまり眠れなかったが、毎日プロテインを飲んでるおかげか意外と疲れがたまってない。朝ご飯食べて、テントを撤収して小雪舞うなか出発。4峰を登り3峰へ。3峰の取付きで、ロープ出して坂口リードで、左の凹角(Ⅲ級)の右隣のラインを登っていく。ちょっと悪いのとザックが重いのが重なり時間がかかる。
その後2ピッチロープ出してからコンテで3峰の懸垂支点へ。このあたりから風が強く吹き、歩こうとすると体がふらつき谷に落ちるかもと思い怖い。風が弱くなった隙をつき頂上へ。14時50分に頂上。頂上に立てたことと4峰正面を登ったのもあってすごく嬉しい。最近頂上に立つクライミングをしてなかったので、やっぱり頂上を踏まないとこの達成感はないなと思った。風も強いので、すぐに頂上の写真を撮って明神へ。トレースがついてるのでその後にそって降りていく。明神の手前のコルにテントが張れそうな所があったので、整地して張ろうとするも風が強くてテントが、飛ばされそうになる。中に入って抑えつけてる間に飛ばされない用にザックを入れたりしてテントを張る。だんだん風が弱くなってきたので、このまま強く吹かないようにと思いながら就寝。
1/2 晴れ
風も強く吹かず無事に朝を向かえる。5時頃に出発し明神へ。登ってる途中で岳沢側に巻いてトラバースしてるトレースがあるので、頂上に行くのかと思い歩いて行くと2峰の基部についてしまった。今回の山行、明神の頂上に立つことも目標になっていたのに通りすぎてしまった。登り返すのも大変なので、2峰を登ることにするも暗くてよく分からない。GWに来た事あるが、何だか景色が違う。残置がないが、登った様な跡があったので坂口リードで登ってみるもだいぶ悪いようだ。ドキドキしながらビレイしてセカンドで登ると足を置くとこがあまりなく腕の力使って登らないと行けないのですごく疲れる。その後は残置もでて簡単になり3Pで2峰越える。振り返ると主峰と東稜が見えるので、明神東稜で亡くなった濱松、加藤さんに黙祷する。3峰、4峰と歩いて行き5峰で、南西尾根をGPSで確認して降りて行く。
樹林帯の所で、ちょっと滑りそうな所が有り気おつけて歩こうと思ったらすべって石におでこをぶつける。だいぶ痛かったが、目の周りに擦り傷できたぐらいでよかった。滑らないように慎重に歩いて岳沢の登山道に出てホッとする。14時40分に上高地。無事に戻ってきたことと山行が達成できたことに坂口さんと握手。休憩してから釜トンに向かうも安全な所まで降りて気が抜けたので、ザックの重さが辛くなる。釜トンに着くと上高地で呼んだタクシーが着いていてすぐに乗り込んで沢渡へ。1日早く降りれたので松本に泊まって帰ることに。ホテルで6日ぶりの風呂に入り近くの居酒屋で祝杯、久しぶりのビールは美味しい。翌朝、名古屋に向けて帰る。