2017年4月6日(木)
ヨーロッパアルプス モンブラン山群
Tacul Modica-Noury
メンバー 坂口、田中
記録 坂口弘記
タイム
※快晴、11まで風強し
6:00小屋発-7:00取りつき-7:35 登攀開始-15:50懸垂開始-18:18取りつき-20:00小屋着
前々日の夜はパーティ内で長い時間話し合った。super couloirは凍っておらず、プロテクションがとれない壁で、今年はだれも登っていないらしい。また、稜線は深い雪に覆われているとの情報もあった。ここまで来たからには、条件が悪くても取りついた方が後悔しないではないかと考えがあり、条件の良い別のルートで楽しんだ方が良いのではないかという二つの考えが私を悩ませた。
サポートの太田さんは別ルートの情報と、そのルートのトポを用意してくれていた。そのルートがModica-Nouryだった。いつもは快適な氷のロングルートだが、今年は氷が薄く、技術的にsuper couloirと同等となっているらしい。そして、アタック日の前日偵察を行い、写真とは異なるsuper couloirの薄い氷をみてsuper couloirをあきらめた。気持ちを切り替えよう。
6時に小屋を出発して取りつきに向かう。天気は快晴。小屋から東にジュアン氷河方面に歩く。前日の下見を済ませていたので取りつきまで不安はない。
7時に取りつき。7時半ごろ登攀開始。田中くんがトップで登りだす。雪が深い。田中君が難なく歩いて箇所で突然胸まで体が沈む。足場を固めていたら、そこが抜けて、深いシュルンドとなっていた。帰りはどうするか気になったが、とりあえず進むことにする。
100mほど進むで、70°くらいの氷壁の基部で田中君がアイススクリューでビレイ支点をつくり、そこを坂口がリードで取り付く。太陽が昇り、気温が上昇したせいかチリ雪崩が止まらない。上を見上げることが出来ないので、アックスが打ち込めない。10㎝のスクリューでとった支点で体を固定して15分ほど我慢する。雪崩が収まったのを見計らって氷壁を抜ける。
そこから200mほど雪壁を登ると、ルートは左右に分かれ、右のガリーに入る。ビレイ支点はステンレスの立派なボルトが打ち込まれていて安心できる。ここからが本番だ。
ガリーの入り口の1P目は田中がリードで登りだす。セカンドで登った一番初めの感触は、全体的に氷が薄いということ。思ったより悪い。田中君は所々スモールカムを交えて支点をとっている。先が思いやられる。
2P目は坂口。ここはルート上で氷は薄いがアイスクライミングを楽しめるピッチ。5mくらいの80°~90°の氷を抜けるとビレイ支点が見えた。
3P目は田中君。側面に薄くついた氷を丁寧に登っていく。上部も傾斜が強いミックス壁となっており、ランナウトする箇所がある。田中君は1P、3Pで当たりを引いたみたいだ。ところどころ珍しく声を出して登っていた。
4P目は坂口。3m位の少しかぶった乗越しがあり、難しいのはそこだけだった。比較的このピッチは短い。
5Pは田中君の順番。下から見上げると悪そうに見える。おいしいところはすべて田中君にもっていかれているので、この5P目は譲ってもらって坂口がリード。ここもスクリューがほとんどきまらないミックスで時間をかけて登る。カムを多めに持ってきたのは正解だった。
5Pを抜けるとガリーは岩で塞がれるように閉じており、そこから懸垂下降か稜線に抜けるかの選択をしなければならない。
前情報を考慮して、頂上に抜けるのは難しいと判断し、懸垂下降することとする。
10回の懸垂下降を終えると、朝またいできたシュルンドの箇所に差し掛かる。怖かったが、足場を固めて飛び越える。たかだか1mくらいなのだが、斜面の途中なので、着地したあと転げ落ちないか心配だった。
取りつき地点に戻ると18時を過ぎていた。あたりはまだ明るい。小屋に戻るまでの道のりで、きれいな景色を堪能できた。4月上旬のタキュル周辺にはスキーヤーはたくさんいるが、クライマーは少ない。19時を過ぎると、col du midi上で自分と田中君だけとなり、すばらしい世界だった。1本満足のいくクライミングが出来てよかったという気持ちで満たされていた。
以上