メンバー:L福島・内田・近藤(21日のみ参加)

日程:2018年10月19日~10月21日

1日目タイム:名古屋発(22:00)―道の駅で仮眠(1:40~5:30)―駐車場(6;00~6:15)・・・錫杖沢出合幕営地(7:45~8:30)・・・注文の多い料理店取り付き(9:10~9:30)・・・終了点(13:30)・・・懸垂終了(14:20)・・・錫杖沢出合幕営地(15:15)

〈1日目〉【注文の多い料理店】記録:福島     天候:晴れのち雷雨

今季、夏壁に取り組んだ最後の集大成として、ずっと行きたかった錫杖の「注文の多い料理店」にトライすることにした。

 前夜名古屋を出発。道の駅『上宝』で仮眠。起床後、槍見温泉のバス停がある駐車場に着くが、平日のため車は一台も停まっていない。さっさと準備を済ませ出発。自分は久しぶりのザック25㌔の重量が老体に堪えるが、若い内田は鼻歌。錫杖沢出合でテントを張り、登攀準備を整え取り付きに向かう。人気の注文ルートだが、平日のため想定通り貸し切り。取り付きでジャンケン。奇数ピッチ内田、偶数ピッチ福島で登攀開始。

取り付きにて登攀準備

1ピッチ目〈Ⅳ級〉リード:内田→階段状の草付きフェース。スルスル登っていくが、支点が取り辛そうだ。草付きテラスの立派なハンガーで終了。

2ピッチ目〈5,8〉リード:福島→テラスから左に少しトラバースし、左上に伸びるクラックに沿って登る。今日イチのリードにビビり、必要以上に支点を取る。最後は左に行きすぎトラバースし戻る。でも、次の週、もう1度行ってみてわかったのだが、本当はトラバースするより直上する方が正規ルートで楽だった。

クラック沿いに登る

3ピッチ目〈5,8〉リード:内田→枯れ木テラスから核心のハング。想定より高い位置にハングがあり、2歩登って4番をキメて右へ。ハングの抜け口に4番をもう1個キメて、足を拾いながら越える。次に自分も行ってみたが、手はハングを越えるまであまり良くなかった。内田、ハングを越えた後、半分くらい行った所でセットしたカムが外れず、その上で一旦ピッチを切る。そのころから少し雲行きが怪しくなってきた。

4ピッチ目〈5,8〉リード:福島→3ピッチ目途中から水平テラスまで。少し右上すると広いクラック。手も足もあり快適。水平テラス直前のトラバースが怖い。トラバース手前で気休めにスリングを伸ばし支点を取る。足を1歩踏み出したら体正面にカチがあり、それを拾って右へ。3日目、左方カンテの帰りの懸垂で、このトラバースで男性が「ここからどうするの~!」と、立ち往生していた。「トラバースするしかありません!」と偉そうに言ったが、本当は自分も「嫌だ―!行きたくなーい!!!」と叫び、情けなくも内田になだめられながらここを越えた(笑)。

5ピッチ目〈5,8・Ⅳ+〉リード:内田→60mロープだったため、2ピッチつなぐ。太いクラックと、細いクラックが2本並ぶ右のクラックを快適に登る。草付きに出るともう終わった感があり、少し寂しい。あまり気持ち良くない草付きを登り、左方カンテと合流するスラブを登って終了点へ。

終了点でグータッチ!互いに激励しあおうと思ったら、いよいよ雲行きが怪しくなり雷がゴロゴロ・・・。雷雲のスピードが思ったより速い!急いで懸垂するが、途中雷雨につかまりロープも体も濡れて寒い。60mロープで水平テラス、枯れ木テラスでロープをセットし直し、3回の懸垂でロープがスタックしないように気をつけながら下降する。雷が怖いし寒いので、早く幕営地に帰りたいが、岩が濡れて滑るのでそうもいかず、慎重に歩き、15時過ぎに幕営地に到着したところで雨が上がり、やっと固い握手を交わす。このルートを今季登攀出来、本当に良かった!

注文の終了点にて

その後、テントで濡れたロープやクライミングシューズ、服をガソリンストーブで乾かしたのだが、これが次の日、1ルンゼ取り付きでの悲劇の幕開けとなる。前日睡眠不足だったため、肉を焼き、酒を少し飲んだらすぐに眠くなり、余韻に浸る間もなく寝てしまった。

〈2日目〉【1ルンゼ】記録:内田    天候:晴れ~雹~雨

2日目タイム :錫杖沢出合(幕営)7:00~1ルンゼ取付き 8:00~6p目終了地点 11:00~1ルンゼ取付き 13:00~錫杖沢出合 14:00~駐車場 15:40

 朝 5:30 頃起床し 7:00 に幕営地の錫杖沢を出発。同じ 1 ルンゼに行くという学生パーティーに近道を教え急登をつめていく。
 7:40 に取付きに到着。登攀準備を行っている中、福島がクライミングシューズを幕営地に忘れてきたとの事。取りに帰るか悩んだが今回はフォローに徹してもらうこととした。
登攀に時間がかかりそうなので学生に先を行ってもらいゆっくりと登攀準備をして 8:00に登攀開始。

1p・2pⅤ+(内田)
フェースの登れそうなところを探して登る。昨年来た時もそうだったが 1p目終了点が見当たらないので 1p・2p目を繋ぎ登る。核心と思われる 2p 目終了点下部の右トラバース
は左に効くカチを取りクラックにフットジャムを決めたらスムーズに右ガバが取れた。 ビレイ点より錫杖沢を見る紅葉が見ごろであった。

3PⅣ(内田)
正面岩の右側を登り、登り切った所で V 字状岩壁を離れ左の凹角に進路を変えて一段上がった安定したテラスで終了。

4p・5pⅣ(内田)
登れそうな所を探しながら左上して行く。特に記憶がないので難しくはないが、ここのピッチは間違えが多いと思われるのでしっかりとトポを確認する必要がある。

6p目Ⅳ(内田)
核心と言われているピッチ。ビレイ点より左にトラバースしペツルが打ってあるカンテを登る。カンテ上部は立っているが足がしっかりおけるので見た目より難しくはない。カンテを上がりきり、凹角・クラックを一段のぼりきると終了点。 終了点に到着すると朝、先行していただいた学生が懸垂で降りてきた。さすが若者。登攀スピードが早い。 福島が登れるか心配だったが、靴での登攀に慣れてきたみたいでスムーズに登る。上がりきると雹が降ってきた。核心ピッチも終了し昨日の雷の事もあるので、終了することを決断する。

6pより懸垂 4 回で取付きに到着。降りてきて思うのだが懸垂は 6p目終了点5メートル程 右側にある懸垂地点よりルンゼを下降しほうがスタックの心配も少ないだろう。 登山靴で登った感想を福島に聞いてみた所、フィリクションが効く靴の置き方のポイントが良い勉強にったとの事。機会があれば自分も挑戦してみたいと思う。 2 日連続の雨下山。幕営地に到着したころには体か震えるほどの冷えを感じた。明日、左方カンテを登る近藤を迎えに一度下山する。体が冷え切っていたので薬師の湯で風呂に入り駐車場で鳥鍋を食べて就寝する。

〈3日目〉【左方カンテ】記録:近藤       天候:晴れ

タイム:登山口(5:30)・・・錫杖沢出合い(6:30)・・・左方カンテ取り付き(7:30)・・・終了点(11:00)・・・左方カンテ取り付き(13:00)・・・登山口(14:30)

 午前4:00頃に起床し、5:30に出発。前日は山に雲がかかり、天気予報では翌日快晴の予報を確認していたが半信半疑であった。しかし、天気予報通り快晴であり、日の出とともに気温も上昇してきたことから、登攀意欲もますます向上する。錫杖沢出合より10人程のパーティーが先行しており、自分たちと同じ左方カンテの登攀ではないかと雲行きがあやしくなったが、確認してみると歩きで錫杖岳の登頂を目指すということだったので一安心。7:30頃より登攀開始。

1P目(Ⅲ級) リード:福島

最初は左上へ伸びるルンゼ。ウォーミングアップにちょうど良い感じ。

2P目(Ⅳ級) リード:福島

引き続き左上へ向かうルンゼ。ホールドはしっかりしており、高度感もなかったので落ち着いて登る。

3P目(Ⅴ級) リード:福島

正面壁のフェースを登る。若干のハングしている箇所があり、あまりいい足の置き場はないが、少し上にガバがあるため、腕の引き上げで少し強引に登る。

3ピッチ目

4P目(Ⅱ級)

バンド状をトラバースし、5P目の取り付きへ。

5P目(Ⅳ+級) リード:内田

正面のチムニーを登る。ステミングも効くため、快適に登れる。

6P目(Ⅳ+級)リード:内田

チムニー左のフェースからカンテへ。途中左右どちらからでも登れそうなフェースが出てきたため、左から行く。手足豊富にあり快適である。

7P目(Ⅴ+級)リード:内田

かぶった凹角から広いチムニー、クラックの走ったフェイス、最後に少しのスラブ。出だしが核心。内田さんは正対で登っていたが、自分は落ちることが怖かったので、バック&フットで登る。チムニーはステミング、クラックはフットジャムが効いたため、快適に登る。最後のスラブは少し怖かった。

左方カンテからの懸垂

後続が続々と迫っていたため、7P目で終了し、懸垂下降。注文の多い料理店側の取り付きへ下降し、全員で記念撮影。その後左方カンテの取り付けへ戻り、13時ごろに下山開始。

初めての北アルプスでのクライミングであり、錫杖岳も登ってみたい山であったため、天候やコンディションに恵まれ、思い出深い登攀となった。

また、福島さんや内田さんにフォローしていただいたおかげで恐怖心も軽減され、非常に快適に登ることができた。お二人共お誘頂き、ありがとうございました!

【まとめ】3日間、大好きな錫杖岳前衛壁で毎日登攀できて良かった。失敗や、反省点など多々あるが、今後に生かせたらと思う。今回の山行で注文を登攀中、3ピッチ目でセットしたカムがどうしても外れず、天候も悪化し雷雨となったため、帰りの懸垂での回収もできなかった。3日目の左方カンテの帰りに回収しようとしたが、テラスは人でいっぱいで、懸垂ルートも渋滞で回収できなかった。次の週、再び内田と注文ルートにカムをクラックに残しておくのは忍びないと回収しに行った。今度はお互い逆のピッチをリードし登攀した。カムはもうなかった。もしも回収した方がいたら、電話番号も名前も書いてあるため、連絡してほしい。