メンバー:L:内田(記録)・福島

タイム:1日目:立山駅7:30―室堂8:45・・・劔御前小屋11:00・・・劔沢小屋11:45・・・長次郎谷出合14:00・・・ビバーク地点16:30
2日目:ビバーク地点5:30・・・池ノ谷乗越6:30・・・三ノ窓7:10・・・登攀開始8:00・・・登攀終了14:00・・・懸垂下降終了・・・ビバーク地点16:30
3日目:ビバーク地点7:00・・・長次郎谷出合8:20・・・劔沢小屋10:15・・・室堂13:30―立山駅15:00

天候:1日目:晴れ一時雨(SCT)・2日目:晴れ(CLR)・3日目:晴れ(CLR)

概要: 7月に計画していたチンネだが、天候不良で中止となった。しかし今年度一度は劔に入る目的を諦められず今回の山行を計画実行した。今年の夏は雨や台風で山行の中止を余儀なくされることが多くストレスとなっていたが今回は台風が前線を押し上げてくれ今季一番の山行日和だ。
立山駅からケブルカーとバスを乗り継ぎ室堂に到着。まずは劔沢に向けて歩き出す。雷鳥沢・劔御前小屋を通過し劔沢小屋に到着。

 

長次郎谷のクラック

劔沢からは平蔵谷まで夏道をたどり出合でアイゼンを装着し左岸に移り下って行く。雪渓が崩落している手前を右岸に移り夏道を長次郎谷出合まで行く。(ピンクテープがある)長次郎谷は出合から雪渓を登りⅠ・Ⅱ峰間で右岸の岩棚に移りアイゼンを外して岩に沿って登り、熊の岩の下部から再び雪渓に戻る。何か所かクラックが開いていたが、特に大きなクラックでもない為、問題なく通過し見えても着かない熊の岩までの急斜面を淡々と登ってビバーク地点に到着。水が取れるか心配していたが、気温が高かったせいか水場からは雪解けの水がジャブジャブ出ていた。
夕食を済ませると日が落ち始めた。しかしビバーク地点に張ってあったテントの住人が帰ってこない。少し心配する。日が完全に落ち始めた頃に長次郎谷上部よりヘッドランプの光が見えたので、少しでも安心感を持って下降してもらう為にヘッドランプを点滅させ、合図を送り続けた。テントの住人がビバーク地点に到着したのを確認し就寝する。
夜中、風が強くテントが揺らされるが朝起きると風も収まっている。予定通り5:30にチンネに向けてビバーク地点を出発。

八ッ峰

雪渓が途切れた場所から右岸側に沿ってガレガレの岩場を詰め行きⅦ峰を過ぎた辺りの所から左岸に移り池ノ谷乗越に到着。ここまで一時間弱で到着。そこから同じようなガレ場の池ノ谷ガリーを下り、一つの目的地である三ノ窓に到着した・・・。

三の窓からチンネ左稜線取付き地点の逆4の字がはっきり見える。雪渓を横断して取付きに到着し登攀準備をする。
1P目:20m内田(Ⅳ)
凹角を登る。・ハーケンが打ってあるがカムの2番がきっちり決まる。そのまま2P目も繋げようとしたが、ロープの流れが悪くなりそうなのでトポ通りバンドに出た所でピッチを切る。

凹角を登る

2P目:50m福島(Ⅳ)
バンドを3m程左にトラバースした後のフェースを登って行き岩壁まで。
3P目:30m内田(Ⅱ)
突き当たった岩壁を右側より巻いて岩壁の間に出る。

小窓の王と三ノ窓

4P目:60m福島(Ⅳ)
両側の岩壁をステミングで一歩上がりフェース登る。その後リッジに出てハイマツ帯を歩く
5P目:60m内田(Ⅲ)
チンネのリッジ沿いのフェースを行く。高度感が出てくるのと同時に小窓の王、クレオパトラニードルが良く見えて気持ち良い。ロープが一杯になったのでハーケンとカムで支点を構築してピッチを切る。

チンネと左にクレオパトラニードル

6P目:20m福島(Ⅲ)
フェースの残りを登ってもらいリッジの頭に出て終了。
7P目:50m内田(Ⅲ)
ピナクルを乗越してリッジを歩き。チンネの鼻手前まで。


8P目:40m内田(Ⅴ)
左稜線の核心ピッチ。順番では福島であったが、福島が一見立っている壁にヒヨリ自分がリードする。2年前に来た時、自分もチンネの鼻にヒヨリ田中君に変わってもらっているのでお互い様だ。高度感のある垂壁の右側から登りハング下から左に進路を変えてハングを越す。その後はフェース登り。終了点が良く判らなかったので、上部の適当なハーケンで切った。

チンネの鼻

9P目:40m福島(Ⅳ)
フェースの残りを登ってリッジ沿い。左方カンテ合流地点のピナクル手前で切った。
10P目:50m内田(Ⅲ)
ピナクルを中央突破して切れ落ちたリッジを歩く。ロープが一杯となる所までで行き岩でピッチを切る。
11P目:30M福島(Ⅲ)
最終ピッチ。チンネの頭まで同じ様に切れているリッジを歩いて登攀終了。


登攀が終了し、がっちり握手を交わした後、チンネと三ノ窓の頭のコルに向けて歩いて行きコルから池ノ谷ガリーに向けて2P懸垂。後続のガイドさん達はコルから少し下って行き左側にある支点から1Pでガリーに降りて行った。
懸垂途中にスマホを落として登り返すアクシデントがあったが無事に発見しガリーに降り立つ。
そこから朝来た道をビバーク地点まで戻り本日の行動を終える。劔の岩々が夕日で赤くなっていくのを見ながら祝杯した。
翌朝、起床し快晴の天気の中モルゲンロートを見てから下山を開始。雪渓の長次郎谷は涼しい吹き快適だが劔沢の夏道の登り返しは暑くて汗だく。劔沢小屋に到着すると、ここまでの静かな山道は終了し登山者で溢れかえっている。御前小屋から雷鳥沢まで一気に降りて休憩。力を振り絞り最後の登りを登って室堂に到着した。


2年前にチンネ左稜線は会の先輩に連れてきていただいた。今回は自分たちの力だけで行けたことに関しては自分なりにも成長を感じたと思う。
また、劔に入り自分の思いを整理できたのは大きかった。パートナーには心より感謝したいです。